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縁起物として人気の長寿梅とは? 盆栽の育て方を詳しく解説
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「盆栽」は、海外でも「bonsai」という発音で通じるほど、知名度が高い日本の伝統文化のひとつです。盆栽ではさまざまな植物を楽しめますが、縁起物が良い「長寿梅」の盆栽も高い人気を誇ります。
しかし、具体的に長寿梅とはどのような植物なのか、よく知らないという方もいらっしゃるでしょう。
ここでは、長寿梅という植物の特徴や育て方のポイントについてご紹介します。
長寿梅とは?
長寿梅(ちょうじゅばい)は、名前に「梅」とつきますが、バラ科ボケ属のクサボケ(草木瓜)の一種で、四季咲き性という特徴を持つ落葉樹です。
四季咲き性とは、育成に必要な最低気温があれば、1年間花を咲かせられる性質を持つ植物のことを指します。長寿梅の場合は春と秋の2回開花します。
花の色は赤と白がありますが、盆栽では赤色が多いです。
年間通して花を楽しむことができるだけでなく、丈夫で初心者の方にも育てやすいことから、花物盆栽の中でも高い人気を誇ります。
また、「長寿梅」という名前から縁起が良いとも言われていて、贈り物としても人気の植物です。
長寿梅の育て方のポイント
盆栽と聞くと、きれいに育てるのが難しいイメージを持つかもしれませんが、長寿梅は丈夫で形がさまになりやすい植物です。置き場所やお手入れなど、基本的な管理に注意すれば、初心者の方でもきれいな姿を楽しめます。
長寿梅の育て方を、置き場所や水やりなど、いくつかのポイントに分けてご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
置く場所は屋外が基本
長寿梅の盆栽は、風通しの良い屋外に置くのが基本です。季節ごとに置く場所を調整することを心がけると、花の健康を保てます。
【春と秋】
風通しと日当たりが良い場所に置いて育てます。
日差しが強い場合は、1日の半分くらい日が当たるか、日なたの半分ほどの明るさがある「半日陰」で育てると良いでしょう。
【夏】
強い日差しは、葉焼けや水切れ(水不足によって植物がしおれること)の原因になります。夏場の時期は風通しが良い半日陰で育てるのがポイントです。
半日陰になる場所がない場合は、遮光ネットなどで日陰を作ることをおすすめします。
【冬】
他の時期と同じく、屋外に置いていて問題ありません。厳冬期は風や霜から守れる日だまりで管理しましょう。
室内で管理したい場合も、風通しと日当たりが良い場所に置くのが基本です。弱ってしまう原因になるので、屋内に置き続けるのは避けましょう。春から秋は2~3日、冬は1週間程度を目安にしてください。
また、冷暖房の風が直接当たらないようにすることも重要です。
水やりのタイミング
長寿梅は水を好む植物なので、十分に水を与える必要があります。表面の土の色が薄かったり鉢が軽くなったりしているのは、水分が足りずに乾いている証拠です。
鉢底から水があふれるくらいを目安に、しっかりと水やりを行ってください。暑さや乾燥が厳しい時期は、葉っぱに霧吹きやジョウロで葉っぱにも水を与えると、長寿梅の元気を保てます。
水やりの具体的な回数は、季節や気候に合わせて調整するのがおすすめです。
春と秋は1日1~2回、夏場は1日2~3回、冬は2~3日に1回程度を大まかな目安にすると良いでしょう。
長期間外出する場合は、水を張った容器に直接鉢を浸す「腰水」を行うと、乾燥を防げます。
土作りと肥料のあげ方
長寿梅は、水はけと保水性に優れた土を好みます。盆栽の場合は、赤玉土をメインに鹿沼土や腐葉土を混ぜた土を使うのがおすすめです。
また、花をたくさん咲かせるには、肥料を与えることも重要です。真夏の時期を除いた、春から秋にかけて有機性の肥料を与えます。固形肥料は月1回、液体肥料は週1回を目安に肥料を与えましょう。
徒長枝(主枝の途中から空に向かって伸びる、樹形を乱す枝)が伸びやすくなるので、管理が難しい場合は肥料を減らしてください。
害虫対策も重要
長寿梅は、害虫や病気に弱いバラ科に属する植物です。アブラムシやハダニなどの害虫対策、葉っぱに白いカビが生えるうどんこ病対策も欠かせません。
春から秋にかけて殺虫殺菌剤を定期的に散布したり、日頃から日当たりや風通しの良い場所で保管したりすることを心がけましょう。
また、根頭がんしゅ病という、根や接ぎ木などにゴツゴツしたこぶができる病気にも注意が必要です。こぶができていた場合はすぐに切り離し、消毒を行いましょう。
剪定は春と秋の2回
剪定(せんてい)とは、見た目が悪い枝や不要な枝を切り落として、樹形を整える作業のことです。枝をそのまま放置し続けると、枝が混み合って風通しや日当たりが悪くなり、育成に悪影響を及ぼしたり、病気につながったりする場合があります。
きれいな樹形を保ち花付きを良くするために、必ず行いましょう。
長寿梅の剪定は、花が咲いた後(春)と秋頃の2回に分けて行うのが基本です。春の剪定は伸びすぎたり絡まったりしている枝を切り落とし、樹形を整えていきます。
長く伸びた枝には花芽が付かないので、ある程度伸びてきたら形が良い場所で切って問題ありません。
秋頃の剪定では、枯れた枝や余分な枝を切り落とし、樹形を整えて長寿梅の健康を保つために行うものです。葉が落ちてから行うと、状態を確認しながら作業しやすくなります。この時、花芽の付いている枝まで切らないように注意が必要です。
剪定を終えた後は、切り口に癒合材と呼ばれる植物用の塗り薬を塗っておくと、切り口から雑菌が入るのを防げます。
また、枝の向きや形を整えるために、針金をかけておくことも大切です。枝が思い通りの向きになったら外します。そのままの形で良い場合は、針金かけを行う必要はありません。
花が咲き終わったら花がら摘みを
長寿梅の花が咲いた後、そのままにしておくと実がなります。結実すると木に大きな負担がかかり、翌年の花付きが悪くなるため、花が咲き終わったらすぐに花がら摘みを行うことが重要です。
花がしおれたら、元の部分から摘み取るようにしてください。
植え替えも行おう
植物は、葉や枝だけでなく根も成長します。そのまま放置すると根詰まりを起こしてしまうので、定期的に植え替えを行いましょう。2~3年に1回が、植え替えの頻度の目安です。
適した時期は秋頃ですが、2~3月や5~6月頃に行っても問題ありません。
古い土をできるだけ取り除いたら、根を優しくほぐし、3分の1ほどカットしてください。切っても新しい根が育つので、しっかりと切り落とすことがポイントです。
また、植え替えの際は、根にこぶができていないか確認しておきましょう。こぶが見つかったら切り落とし、殺菌剤でしっかりと消毒を行ってください。
消毒を行った後、一回り大きな新しい鉢に清潔な用土を入れて植え替えます。最後に水をたっぷりと与えて、風通しの良い場所に置いたら植え替えは完了です。
初心者でも育てやすいのが長寿梅の魅力
長寿梅は、梅に似たかわいらしい花を楽しめる植物です。四季咲き性で1年に複数回花を咲かせるうえに、名前も縁起が良いことから、贈り物として高い人気を誇ります。
また、長寿梅は丈夫なので、基本的なお手入れ方法に注意すれば盆栽初心者の方でも育てやすい点も魅力のひとつです。
盆栽に興味がある方は、長寿梅の盆栽からチャレンジしてみてはいかがでしょうか。