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梅雨とは何か? 仕組みや読み方の由来について解説

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春が終わりを迎えると、雨の日が続く「梅雨(つゆ)」の時期が訪れます。湿気が多くジメジメとした日が続く梅雨ですが、なぜ雨が降り続けるのでしょうか。また、なぜ梅雨と呼ばれるのかご存じない方も多いかもしれません。 

ここでは、梅雨と呼ばれる現象が起こる仕組みや、読み方の由来などについてご紹介します。 

梅雨とは? 

梅雨とは、雨と曇りの日が増えて、晴れの日が少なくなる季節のことです。気象庁では「晩春から夏にかけて雨や曇りの日が多く現れる期間」を梅雨と定義しています。日本だけでなく、中国や韓国など、東アジアで広く見られる現象です。 

では、なぜ晩春から初夏の間の季節は雨や曇りの日が増えるのでしょうか。 

ニュースでよく耳にする「梅雨前線(ばいうぜんせん)」や、具体的な時期など、梅雨に関する基礎知識をご紹介します。 

梅雨に雨がたくさん降る理由 

梅雨の時期に雨がたくさん降るのは、雨が降る仕組みが関係しています。空気は、上に昇る暖かい空気(暖気団)と下に降りる冷たい空気(寒気団)の2種類に分けられます。 

暖気団と寒気団のぶつかる部分が「前線面」、地面に前線面が接している部分が「前線」です。前線では暖かい空気が上に昇って雲が作られ、雨が降りやすくなります。 

梅雨の時期になると南から「太平洋高気圧(小笠原気団)」の暖かい空気が、北からは「オホーツク海高気圧(オホーツク海気団)」の冷たい空気が日本に流れてきます。 

この2つの空気が押し合うことで、「梅雨前線」という停滞前線ができます。これが、梅雨の時期に雨が降りやすい理由です。 

梅雨前線の活動は、主に西日本側で活発になります。 

「秋雨前線」ができる秋の時期も雨が降りやすいですが、秋雨前線ができるのは「移動性高気圧」から冷たい空気が流れてくるためです。 

梅雨前線に比べて停滞する期間が短く、東日本や北日本側で雨が多くなる傾向にあります。 

梅雨の時期はいつ?

梅雨の時期はおおむね5~7月頃です。梅雨の始まりは「梅雨入り」、梅雨の終わりは「梅雨明け」と呼ばれます。 

梅雨前線は日本列島を南から北へと進んでいくので、通常は梅雨入り・梅雨明けも沖縄、九州、四国、近畿、関東、東北の順になります。 

ただし、梅雨入りや梅雨明けは明確に日にちが決まっているわけではありません。日本では、気象情報に基づいて、気象庁が梅雨入りや梅雨明けの日にちを決定・発表しています。 

期間はその年の気象状況によって異なりますが、1ヶ月から1ヶ月半程度続くことが多いです。 

梅雨は植物には欠かせない存在 

雨が降り湿気も多くなる梅雨は、多くの人にとって気がめいる時期かもしれません。しかし、多くの植物にとって、梅雨は「恵みの雨」として重要な現象です。 

お米や野菜などの農作物を育てるうえで、この時期の雨は欠かせません。 

また、梅雨の頃に咲くアジサイの育成にも梅雨は関わっています。アジサイは多くの水分を必要とする植物です。雨や曇りの日が続く梅雨の時期は、アジサイにとって最適な環境といえるでしょう。 

梅雨に関する豆知識 

日本人の生活になじみ深く、植物の育成にも欠かせない梅雨ですが、なぜ「梅」に「雨」と書いて「つゆ」と読むのでしょうか。 

ここからは梅雨という言葉の由来や別の表現など、梅雨に関する豆知識をご紹介します。 

「梅」の漢字を使う理由

梅雨に「梅」の漢字を使う理由は諸説ありますが、中国が由来とされています。 

1.梅が熟す時期に降るため 

梅の実が熟すのは5~6月頃です。中国でも梅の実が熟す時期にたくさんの雨が降るため、「梅雨」と呼ぶようになったとされています。 

2.カビが生えやすい時期だから 

5~6月頃は雨が多く降って湿度が高くなるうえに、気温も上がるため、カビ(黴)が生えやすい時期です。もともとは「黴雨(ばいう)」と呼ばれていたものが、同じく「ばい」と読める「梅」を当てて「梅雨」になったという説もあります。 

「つゆ」と読むのはなぜ? 

「梅」の漢字を使う理由でも触れたように、梅雨は「ばいう」と読むことができますが、日本では「つゆ」と読むのが一般的です。 

江戸時代頃から「つゆ」と呼ばれるようになったとされていて、その理由も諸説あります。 

1.露(つゆ)に濡れる時期だから 

雨の日が多く湿度が高い梅雨の時期は、植物の葉にたくさんの露(つゆ)がつきます。その風景から転じて「つゆ」と呼ばれるようになったとされています。 

2.梅の実からの連想 

梅雨は梅の実が熟す時期です。梅の実が熟して潰れることから、「潰ゆ(つゆ)」に転じたという説もあります。 

3.カビで食べ物が傷みやすい時期だから 

黴雨と同様に、カビが生えて食べ物が傷むことを意味する「費ゆ(つひゆ)」から転じてつゆになったという説もあります。 

「梅雨」以外の表現も 

日本には、梅雨以外にも5~7月頃の雨を表現する言葉があります。梅雨と同じ意味を持つ言葉とそれぞれの由来は以下のとおりです。 

【麦雨(ばくう)】 

梅と同じく、麦も梅雨の時期に熟します。そのため、麦が熟す頃に降る雨という意味で、「麦雨」と呼ばれることがあります。 

【五月雨(さみだれ)】 

旧暦の5月(現在の6月頃)に降る雨が「五月雨」です。梅雨よりも古くからある言葉で、平安時代に作られた『古今和歌集』や『源氏物語』、『大鏡』などでも使われています。 

【黄梅の雨(こうばいのあめ)】 

梅の実が熟して黄色くなる頃に降る雨なので、黄梅の雨と呼ばれることもあります。 

他にも、梅雨入りの時期にクリの花が落ちることから「墜栗花(ついり)」と呼ばれることもあります。 

また、鹿児島県の「ながし」や沖縄県の「小満芒種(スーマンボースー)」など、地域ごとに別名もあるようです。 

北海道には梅雨がない? 

日本をはじめ、韓国や中国など、東アジアの多くの地域で見られる梅雨ですが、北海道には梅雨がありません。 

前述のとおり、梅雨の原因は南の太平洋高気圧と、北のオホーツク海高気圧との間に挟まれてできる梅雨前線です。梅雨前線は太平洋高気圧の北上に伴い、日本列島を南から北へとゆっくり移動していきます。 

梅雨前線が北海道に近づくのは7月の後半頃です。その時期になると、南北の空気の温度や湿度の差が小さく、前線を作り出す力が弱くなっています。 

結果として、梅雨前線は北海道まで届かないか、届いたとしても梅雨と呼べるほどの雨の日が発生しないのです。 

梅雨前線が北海道付近まで近づくと梅雨のような天気が続くため、「えぞ梅雨」と呼ばれることもあります。 

しかし、えぞ梅雨は毎年決まった時期に発生するわけではありません。そのため、「北海道では梅雨がない」ということができます。 

また、太平洋高気圧の影響を強く受ける小笠原諸島では、雨の多い時期がほとんどない年もあります。他の地方に比べて雨の続く期間が短く、毎年見られる現象でもないため、気象庁では梅雨入り・梅雨明けの発表を行っていません。 

知識を深めて梅雨ならではの景色を楽しもう 

例年5~7月頃が梅雨の時期にあたりますが、明確な基準はありません。その年の気象情報を基に、気象庁が梅雨入りや梅雨明けを発表します。 

また、梅雨という言葉の由来には諸説あり、中には梅の実が関係しているものもあります。 

語源や由来を知ると、梅雨をより楽しめるのではないでしょうか。 

ジメジメした日が続く梅雨は、多くの人からすると気がめいる時期ですが、稲やアジサイなど、植物の育成には欠かせない重要な季節でもあります。 

知識を深めて、梅雨ならではの景色を楽しんでみてください。 

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